自他ともに認める極度の方向音痴である。
ショッピングモールでも入ってきたところから出ることができない。
東西南北の方角を意識して歩くことができないし、建物や交差点よりも行きかう人や犬や空模様などを見ながら歩いている。
そんな自分でも、車に乗ればカーナビが教えてくれるし、なんといっても最強のグーグルマップがある。
どんな場所であろうと、それが例え辺境の海外であろうと、電波さえつかめれば大抵の目的地に辿り着くことができる。
しかしながら、そんな文明の利器にも弱点はある。
道に詳しすぎることと、最後の詰めが甘いこと。
グーグルマップに頼り過ぎて、身の危険を感じたお話を少しさせていただきます。
※本当にヤバかったので写真を撮る暇はありませんでしたのであしからず。
旅立ちの朝
以前にご紹介したジョンティエンサウナへ午前中から歩いて向かってみようと事前にグーグルマップをセット。
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本来なら北側の大通り沿いから入口に向かうのが常套なんだろうけど、グーグルマップには南側へショートカットの道があるとの指示。
何も考えずその通りに歩いて行った。
すると、どんどん道の舗装が無くなっていく。
最終的には林の中の獣道に誘われる。
不安になって、何度も地図を見返すのだけど、間違いではない。
「よくこんなあぜ道を認識するな~」
「でもすごい。確かに近道だな」
民家らしき建物の裏手辺りから、舗装された小道に出た。
突然の襲撃
もうすぐ目的地だと、ほとんど人通りのない一本道を進むと・・
突然、脇道から3匹の野犬らしき犬がけたたましく吠えながら飛び出してきた。
牙を剥きだして、「ウウッ~」敵意たっぷりの唸り声。
本当に突然のことにびっくりして呆然・・
RPGゲームで言う、エンカウントである。
敵はドラクエで言うと
「デスジャッカルが3匹現れた」的な
当然、予告音はリアル野犬の威嚇咆哮。
有無も言わさず、シームレスに戦闘画面へ。
そして、こちらの装備はTシャツに短パン、サンダルである。
リアル「布の服」。
そして素手。
モンスターはもちろん犬と格闘したことなどないので、当然レベルは1。
スカウターで見ても戦闘力2程度かと。
更に言うと住所不定40代おっさんである。
敵のスキルは致命的
野良犬数匹くらいに噛み殺されるとは思わないけど、面と向かうとスゲー怖い。
更に頭によぎるのは「狂犬病」の文字。
狂犬病は、犬あるいは動物だけの病気ではなく、人を含めた全ての哺乳類が感染し、発病すると治療方法がなく、悲惨な神経症状を示してほぼ100%死亡する極めて危険なウイルス性の人獣共通感染症です。 狂犬病 – 日本獣医学会HPより引用
ほぼ100%死亡する極めて危険なウイルス・・・(発病するとね)
野良犬程度に行く手を阻まれるのは癪だけど、
たかがサウナへ行く程度で命を懸けて戦いを挑む理由が無い。
当り前だけど、ここは日本ではない。無用な危険は極力避けて通るのが定石。
逃げ出した!しかし・・
睨みを利かせつつ後ろへ後ずさりして来た道を引き返そうとした瞬間。
退路に新たなデスジャッカルが一匹現れた。
「逃げだした」
「・・しかし、回り込まれてしまった」
ってのを人生で初めて経験した。
前方に3匹。
後方1匹に囲まれてしまった。
上手く伝えられないけど、人気のない一本道で車やバイクも見かけない場所で
昼間とは言え、そんなところで「狂犬病」という牙エンチャント攻撃を食らうかもしれない状態で退路を塞がれる恐怖。
後に少したってから緊張で胃液が逆流して吐き気がしたくらいビビりました。
村人に助けを乞う
しかし、何とかしなければ・・
ふと見ると民家の勝手口のような扉の隙間の先に地元のおばさんを発見。
これは、ありがたい。
おばさんが女神に見えた。
すぐにその民家に駆け込んで、「あの犬たちのせいで身動きが取れない」と助けを求めた。
ゴールドを使って、タクシーとか呼んでもらおうかと考えたのだ。
するとそのおばさんは、徐に小枝を拾って渡してくれた。
「これで戦って進みなさいと」(ホントですよ)
昭和の小学校で使用した、竹の定規サイズの心もとない「小枝」である。
これじゃネズミも倒せそうにない。
「マジかよ・・」
ここで素手から「小枝」を装備させられた。
戦いの準備
●ヒノキの棒(小枝)
●布の服(Tシャツ・短パン・サンダル)
●ゴールド(タイバーツ)と世界地図(スマホ)
レベル1は変わらずだが、装備品は以上となり、
戦いの準備は整った。
って・・なんでやねん!
いや無理だし。
すると奥から旦那さんらしき男性があらわれて、更に旅の助言をくれた。
「タイの犬は吠えるだけで噛まないから、枝で追い払えるぞ」と半笑で。
普段は比較的秘境の場所でもグイグイ進むタイプだけど、これはにわかに信じがたい。
タイの野犬は噛まないなんて聞いたことないし。
たとえ、正しかったとしても凄い勢いで向かってくる野犬4匹と小枝で戦う気がしない。
なんといっても向こうは、狂犬病スキルを持っているかもしれない。
「猛毒」というより、自分的には「ザラキ」いや「死の宣告」に近い。
世界地図の嘘
結局、その方々(村人)にお願いして庭の中を通らせてもらい、500m位迂回して難を逃れた。
(とりあえず、一旦ありがとうございました)
緊張と脂汗でフラフラになりながらグーグルマップと言う名の「世界地図」の示す目的地に到着すると・・
壁で塞がれており、「裏口からは入れません。戻って正面からどうぞ」という趣旨が丁寧に英語で表記。
要するに「この先行き止まり」ってやつ。
・・・・
あの来た道を帰らなければ、戻れない。
なんだこれ?ツイてないにも程がある。
結局、また民家の庭を通っておばさんのもとへ。
いざ、戦いへ
重ねてご迷惑をお掛けしていることをお詫びして、意を決する。
そう、右手に握られた聖剣エクスカリバーは
「あの小枝」である。
そこを通らなければ、先にも後にも進めないんだから仕方ない。
作戦はこうだ
「半泣きの小学生よろしく、枝を振り回しながら走り抜ける作戦」
腹を決めて、サンダル履きの両足を高くあげ猛ダッシュ。
(40過ぎてダッシュってした記憶がないよ。そして、戦いと言うか逃げてるだけ)
当然、デスジャッカルが牙を剥いて襲い掛かってくる。でも走って逃げるしかない。
犬に追いかけられて尻を噛まれるのび太の気分。だがドラえもんはいない。
ドラえもんは、来る途中の雑木林で亡骸となっていた(嘘みたいだけど、この写真は野犬とエンカウントする数分前に撮ったものです)
後ろは振り返らず、必死で走りました。
50m程吠えながら追われたけど、縄張りを抜けると諦めてくれた。
なんとかエスケープ成功。
まとめ
タイでも、大通りにいる犬は日中は大体木陰で寝てるし、人に吠えたりしない。
しかし、ひとたび裏路地に入ると犬の世界でも治安がぐっと悪くなるのは同じみたいです。
とにかく、あまり人生でも経験したことのない冷や汗だか脂汗だか掻きました。
教訓としては、世界地図(グーグルマップ)を鵜呑みにして道なき道を進むのは危険。
安全な大通りを歩きましょう。ってこと。
それでも、進む勇者の方々は鋼の剣と鎖帷子、薬草と毒消しを十分に装備して
出発前に手厚い海外医療保険と総合病院の連絡先を携えてどうぞ。
笑えないくらい、怖かった野犬のお話でした。おわり。